😸猫の来院について大切なお願い

外に出たことがある猫🐈の体調不良にご注意ください ―

外に出たことがある猫や野良猫が体調を崩している場合、まれに人にも感染する深刻な病気(SFTS)が関係していることがあります。
実際に、三重県内では、SFTSウイルスに感染した猫を診察した獣医師が、命を落とす事例が報告されました。

この記事では、SFTSの基礎知識と、猫の診察にあたって皆さまにご協力いただきたい重要なお願いをまとめています。
皆様の健康と命にも関わる大切な内容です。
とくに猫の飼い主の方は、ぜひ一読のうえ、ご来院をお願いいたします。


【SFTS(重症熱性血小板減少症候群)について】

命を守るために、知っておいていただきたいこと ―


三重県内で、SFTSによる獣医師が死亡する事例が発生しました

先日のニュースでご覧になられた方も多いと思いますが、三重県の動物病院にて、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)ウイルスに感染した猫を診察された獣医師が、後にSFTSを発症し、命を落とされるという痛ましい事例が発生しました。

この出来事は、私たちすべての動物医療従事者、飼い主の皆さま、そして、今はペットを飼っていない皆様にとっても「他人事ではない話」です。

当院では、今回の死亡事例を受けて、SFTSに関する注意喚起とお願いをさせていただきます。


SFTSとは?

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、マダニを媒介として人や動物に感染するウイルス感染症です。
人がSFTSウイルスに感染した場合、致死率は20%を超えることもある
と報告されており、非常に危険な感染症です。

SFTSに感染した猫や犬は、以下のような症状・徴候を示すことがあります。

  • 発熱
  • 元気がない、食欲がない
  • 嘔吐、下痢などの消化器症状
  • 黄疸(猫)
  • 白血球や血小板の減少

しかし問題なのは、初期にはこうした症状・徴候がはっきり現れないことが多いという点です。
また、これらの症状・徴候は、SFTSだけに特徴的に出る症状とも言えません。


野良猫や外に出る猫が、とにかくリスクが高い

SFTSウイルスは、マダニを介して感染するため、外に出る猫、野良猫にリスクが大きい病気です。
SFTSに感染した猫からは、直接人に感染する可能性があることが明らかになっています。

  • 引っかかれる
  • 噛まれる
  • 液体(唾液・血液など)に素手で触れる

こうした日常的な接触で、人間に感染が成立する可能性があります。

※感染動物から以外にも、マダニを介して人間が感染するケースも多いです。


SFTSを「診察時にすぐ見抜くこと」は困難です

SFTSは、特有の決め手となる症状が乏しく、他の感染症や一般的な病気と似た症状を示すことがあります。そのため、症状だけを見て、SFTSかどうかを即座に見抜くことは困難です。
以下のようなケースでは、SFTSの可能性を常に念頭に置いて対応する必要があります。

  • 外に出ていた猫が、元気がない食欲が無い
  • 野良猫を保護した直後で、体調が悪そう
  • ノミ・マダニの予防をしていない猫が体調を崩している
  • よくわからないけど、熱がある
  • 他の症状が明らかでも、外に行った形跡がある

このような猫の診察では、当院では完全防護服を着用したうえで慎重に診察を行います。
これは、万が一の事態に備えた、安全のための処置です。


野良猫診療の現実と、これからの対策

私たち獣医師はこれまで、野良猫も可能な限り助けようと努力してきました。
しかし、SFTSのように人間の命に関わる病気が身近にある今、対応を見直す必要があります。

とくに「猫を触っただけで人に感染する」SFTSのような感染症に対しては、完全な防護装備が前提の診療体制が必要になります。
これは、病院スタッフだけでなく、他の来院動物や飼い主さまの安全を守るためでもあります。


飼い主の皆さまへの3つのお願い

猫を外に出さないでください

→ 外に出ることで、マダニやSFTS感染リスクが一気に高まります。
→ 外に出た猫が体調を崩した場合、診察・検査・隔離費用・諸経費など、通常より大きくかかります。

マダニ予防を徹底してください

→ 猫にも犬にも、月1回のマダニ予防が基本です。予防方法についてはお気軽にご相談ください。
→ 市販の予防薬やノミ取り首輪は、効果が不十分な場合があります。また、個人輸入品など、安全性や効果が確認できない製品の使用はお避けください。
→ 予防していても100%防げるわけではありませんが、予防していない状態では、診察の受け入れが難しい場合があります。

体調の悪い猫を連れてくる前に、必ずお電話ください

→ 外に出た猫・野良猫・発熱がある猫・予防をしていない猫など、SFTSの可能性がある動物の来院には、事前準備が必要です。
事前連絡なく直接来院された場合、院内の安全確保のため、診察をお断りすることがあります。
→ 診察に関わるスタッフ、他の飼い主さま、院内の動物たちを感染のリスクにさらしてしまうため、必ず事前にお電話いただいた上で、到着後は駐車場から再度お電話いただき、受付の指示に従い車内でお待ちください。
→ また、キャリーケースに入っていない猫の診察はお断りします。必ずキャリーケースに入れてご来院いただき、スタッフの指示があるまで猫を出さないでください


来院前のご連絡:TEL 059-223-0011


命を守るために、できることから始めましょう

野良猫を保護することは、優しさの表れです。
でも、「優しさ」と「慎重さ」は両立しなければなりません。

  • 外猫を安易に餌付けしない
  • 保護したらすぐ触らず、経過観察と隔離を行う
  • 十分な健康確認ができるまで、家猫と接触させない

今後、すべての動物病院が、外に出る猫や野良猫に対して、診療の受け入れ体制を見直すことになるかもしれません。
当院でも、安全と命を守るための方針を、随時見直してまいります。


完全防護服イメージ

外に出る猫の診察では、この図のイメージのような対応が必要になります。


SFTSの詳細はこちら

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院長より最後に

私たちは、これからも、命を守るための診療を誠実に、慎重に続けてまいります。
とはいえ、SFTSの問題は、動物病院だけの努力では安全な診察が難しい感染症です。
皆様一人一人のご理解と、安全な診察へのご協力・ご配慮があってこそ安心して通っていただける動物病院となります。
どうか、引き続き、ご理解とご協力をお願いいたします。