人もペットも、マダニによる感染リスクを避け、病気の予防を徹底しましょう。
🐾 マダニの相談が増えています
マダニに寄生されたわんちゃん・ねこちゃんを連れて、相談に来られる飼い主さんが増えています。
マダニは、ただの虫ではありません。吸血する際に、さまざまな病原体を媒介します。
その中でも、最近特に大きな話題となっているのが、「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」というウイルス性の感染症です。

SFTSとは?
SFTSは、ウイルス性の疾患で、マダニが媒介する、人と動物の両方に感染する感染症(人獣共通感染症)です。
特にねこちゃんに感染すると重症化しやすく、感染した猫から人へ感染する可能性もあるため、非常に注意が必要な病気です。
※SFTSを正式名称で表すと「重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)」となり、非常に長いため、この記事ではSFTSの略称を用いています。
SFTSが怖い理由 ① ~致死率が高いです~
SFTSは致死率が高い病気です。
- 人では、特に高齢者で致死率が30%以上
- ねこちゃんでは、致死率が50~70%という報告もあります
SFTSは、わんちゃん・ねこちゃんだけの病気ではなく、飼い主さんご自身の命にも関わる深刻な問題です。
SFTSが怖い理由 ② ~複数の感染経路がある~
SFTSには、複数の感染経路があります。
- マダニ → 人
- マダニ → 動物
- 動物 → 動物
- 動物 → 人
複数の感染経路があることが、感染予防を難しくしています。
感染したねこちゃんから、看護や治療にあたった飼い主さんや獣医師・動物看護師が感染・発症してしまうという、非常に痛ましいケースも実際に報告されています。
SFTSが怖い理由 ③ ~比較的、新しい病気です~
SFTSは、人類が過去に経験してこなかった「新興感染症」という伝染病です。
歴史は浅く、中国で2009年に初めて公式報告されました。今から16年前のことです。
日本では、2013年に山口県で初めてのSFTSの患者さんの報告がありました。
その後、過去の症例を遡って調査され、2005年にSFTSが疑われる患者さんがいたこともわかっています。ただし、当時は、新しい病気として認識されておらず、診断がついていなかったのです。
いずれにしても、ほんの20年前のことです。(※注:当記事の執筆は2025年です。)
初期には九州地方~中国地方が発生の中心でしたが、年々感染エリアが拡大し、今や日本の広い範囲が、流行地域となってしまいました。(病気の広がりは以下のサイトをご確認ください。)
日本では、人間の病気として四類感染症に指定
SFTSは、人間でも致死率が高いこと、公衆衛生上の問題が大きいことから、人間の病気として四類感染症に指定されています。
三重県はSFTSの多発地域
三重県は、近隣県と比較しても、比較的SFTSの症例報告が多い地域です。
特に伊勢志摩地域を中心に、人や動物の感染報告が相次いでいます。
野良猫や、外に出てしまうねこちゃんは、感染リスクが非常に高い環境に置かれているため、十分な注意が必要です。
予防がいちばん大切
感染症である以上、SFTSを完全に防ぐことは難しい部分もあります。
しかし、リスクの低い行動を心がけることで、動物も、私たち自身も身を守る必要があります。
✅ マダニとの接触を避ける
- 露出の多い服装で草むらには立ち入らないようにしましょう
- 野山にむやみに立ち入らないようにしましょう
- 庭を草ぼうぼうの状態にしないようにしましょう(家庭菜園をされている方は要注意です)
- そうした場所への立ち入りが避けられない場合は、マダニ忌避剤を使用しましょう
✅ ペットのマダニ予防を徹底する
- 月1回のマダニ予防薬の使用を徹底しましょう(冬にも予防が必要です)
- 市販の首輪や個人輸入品は避けましょう(予防効果が弱い場合があります)
- かかりつけ獣医師に日常的に相談し、確実な予防を行いましょう
✅ 野外で弱っている猫(や動物)をむやみに救護しない
- 弱っている野良猫を助けたいお気持ちは素晴らしいことですが、ご自身の安全を守るためには、一度立ち止まり、安全に救護できるか、冷静に考えてから行動することが大切です。
- もし、救護する場合は、絶対に噛まれたり、ひっかかれたりしないよう十分に注意してください。
- 可能であれば、マスクや手袋、防護眼鏡、防護服を使うなどの対策が必要になることがあります。(マスクは、N95マスクが望ましいです。)
正しい知識を持ち、予防・対策をすることで、感染リスクは大きく下がります。
当院からのお願い
当院では、SFTS対策として以下の点をお願いしています。
- ノミ・マダニの予防をしていないペットは、原則的にお預かりができません。
(トリミング・ペットホテルいずれの場合も、マダニの予防は必須です) - 外に出るねこちゃんが、体調がすぐれない場合は、ご来院の前に必ず電話でご相談ください。
- 野良猫や保護した猫の診察をご希望の場合も、必ず事前にご連絡をお願いいたします。
- SFTSの可能性が少しでも疑われる動物の診察は、完全防護体制での診察が必要になります。
事前のご相談がないまま直接ご来院されますと、院内の他の動物や人間を危険にさらしてしまう可能性があります。
安全な診療のため、必ず事前にお電話でご相談のうえご来院ください。
📞 059-223-0011
もしマダニを見つけたら
既に体表に寄生して固着しているマダニを見つけてしまった場合は、絶対に無理やり取らないでください!
ダニの体を無理につまむと、マダニの体液が逆流し、病原体が体に入ってしまう恐れがあります。
「これ、マダニかも?」と思ったら、勘違いでも構いません。
- わんちゃん・ねこちゃん → 動物病院へ
- 人間 → 皮膚科へ
早めの対処が大切です。
まだ体表や毛の上を這いまわっているマダニを見つけた場合は除去していただいて構いません。
ですが、除去の際も、決して噛まれることが無いよう注意してください。
また、マダニを潰して、その体液が飛び散ったりしないよう、注意して取り扱ってください。
除去したマダニは、熱湯に沈めて殺滅するのが安全な対処だと思います。
皆さまへ
SFTSは、日本でまだ多くの方に知られていない新しい感染症(新興感染症)ですが、決して「自分とは無関係」な病気ではありません。
新型コロナの流行からも学んだように、感染症は私たち一人ひとりの行動で乗り越えることができると思います。
どうか、正しい知識を身につけ、ご自身の行動を慎重にするとともに、わんちゃん・ねこちゃんのマダニ予防を徹底し、外に出る猫ちゃんは室内飼いへ切り替えるなど、命を守る行動をお願いいたします。
さらに詳しく知りたい方へ
NHKの特集サイトも参考にしてください:
👉ご不明点がありましたら、お電話でお問い合わせください。
みやペットクリニック
📞 059-223-0011
元気がない、外に行くねこちゃん、野良猫や保護した猫の来院について
以下のリンクでご確認ください。
