認知症③~症状・後編~

引き続き、認知症の症状のお話です。

高齢のわんちゃんを飼われている飼い主さんで、病気のことが心配な方は、相談にいらしてください。
認知症のチェックシートを病院に準備しています。
シニア年齢のわんちゃんは、定期的にチェックをしていくことをお勧めします。

①見当識障害
「日常的に生活している環境がわからなくなる」「家族のことがわからなくなる」「いつもしている行動の手順がわからなくなる」または、これらに伴う「混乱」の状態。

・いつもの散歩コースを間違えた。自宅への帰り道がわからなくなった。
・自宅の中でどこにいるのかわからなくなった。トイレの場所がわからない。
・これまで日常的に通っているドアの開く方向がわからないことがある。(内開きか外開きか、右左どちらが開くか、そもそもドアの場所が間違っている等)
・よく知っているもの、場所に対して異常な反応をすることがある。または無反応なことがある。
・飼い主さんのいつもの帰宅時間に、外から侵入者と勘違いして吠えてしまった。家族がわからなかった。同居している動物の事がわからなかった。
・うろうろと歩き回ることが増えた。徘徊行動。狭い場所に入り込んで出られなくなったことがある。

②社会的交流の変化
「飼い主さんとの関わり方の変化」「同居する動物との関係性の変化」

・来訪者、家族、他の動物に対して攻撃的になったり、威嚇することがある。
・可愛がられたり、撫でられたり、挨拶されたときへの反応が鈍い。(今までと反応が違う様子。)
「過剰反応」と「無反応」、どちらも起きる可能性があります。

③睡眠サイクルの変化
人間でも軽度の認知症の高齢者に寝つきが悪くなることが多いことが知られており、病気が進行すると昼夜逆転に進行します。脳内物質の変化によると言われています。

・昼間に眠りっぱなしになる。夜に眠ってくれない。夜泣きがひどい。
・同居家族が、眠れないほど無駄吠え夜鳴きなどで騒がしい。近所迷惑になっている。(なりそう)

④粗相・学習や記憶の低下
「これまで学習したことができなくなる」「排泄をトイレでできなくなる(失禁)」など

・お手やお座り、取ってこいなど、今まで当たり前のようにできていた簡単な命令が実行できなくなった。
・今まで排泄していたトイレ以外で排泄してしまうことがある。
・好きだったおもちゃや、大好きなはずの散歩への連れ出しなどで、犬の気を引くことが難しくなった。
・ボーっとしていることが多い。

※失禁は認知症以外でも多くみられる症状なので、注意が必要です。

⑤活動性の変化(低下)
「目的のある行動が低下する」「無目的な行動が増加する」

・うろうろと動き回る。円を描いて動き回る。壁に沿って動き続ける。(徘徊、放浪)
・無駄吠え、咆哮。
・食べても食べても食べたがる。または食への興味が低下する。
・何かを過度に舐める。(自分自身や飼い主さん、カーペットや家具など)
・無関心な様子がある。探索行動の低下。

⑥不安感
「過度におびえる」「不安が増す」「パニックを起こすことが増える」

・飼い主さんがいない時の不安が増えた。
・環境が少しでも変化するとパニックになる。
・玄関のチャイムにおびえる。車の音におびえる。

①~⑥のカテゴリーにきっちりと区別することはできない症状もあります。また、複数のカテゴリーに該当する症状もあります。
症状を分類することが目的ではなく、整理することで病気の診断(理解)をすることが目的です。これによって治療が変わるわけではありません。
この分類を基にした、チェックシートがあります。
飼い主さんにチェックしていただき、診察で他の病気の可能性の有無を検討し、総合的に認知症の有無・程度を判断していきます。(上記の症状があれば、即座に「認知症」と診断できるわけではありません。)

猫では犬ほど、認知症である状態が「飼い主さんの生活」へ与える影響が大きくないためか、あまり動物病院への相談が多くはない印象がありますが、それでも同様のことが起こっていると思います。
猫さんに関する話は、次回に少し説明したいと思います。

今回は、認知症の症状についてのお話でした。
お読みいただき、ありがとうございます。