子犬の咬み癖の修正法

コロナ禍で、皆さんもストレスの多い日々が続いていることと思います。
そんな中、家ごもりで、初めて子犬を飼うご家庭が増えているとも聞いています。

きっと、しつけで困られている飼い主さんもおられるかと思います。

今回は、子犬の【甘咬み】のお話をします。

【咬み癖】を放置していると、【甘咬み】の状態ではなくなります。アメリカでは犬を飼えなくなる原因のトップが、犬の暴力性なんだそうです。
とても悲しい現実です。

そんな困った状況になってしまわないように、トレーニングによって早め早めに修正をすることが大切です。

おうちに子犬を迎えたら、咬み癖が始まる前から、全ての子犬に実践してもらいたい方法があります。

そして、子犬に限らず、大人の犬になっても咬み癖の修正は、この方法がスタートです。

それは【カムアットレーニング】というちょっと変わった名前の訓練方法です。
とても簡単に実践できて、効果的な方法なので、ご紹介します。

また、カムアットレーニングには、全てのしつけの基礎的な考え方が詰まっています。ぜひ覚えて実践していただけたらと思います。

トレーニングは以下のステップで行います。

<ステップ1>

まず、子犬が咬んで遊べるおもちゃを準備します。少し長さがあり、一緒に引っ張りっこ遊びができるものです。
これを飼い主さんが持って、一緒にひっぱりっこあそびw 

ここでは、犬が怪我をするほどの激しい引っ張り合いをしないことと、犬が楽しんで夢中で引っ張りっこができるおもちゃであることがポイントです。

犬が気に入ったおもちゃを見つけてあげてください。
ペットショップに売っているものでも構いませんし、同じようなものを自作していただいても構いません。
太めのロープの両端に結び目を作ったり、決してちぎれることのないタオルを縛ったようなものでも代用可能です。

遊びは引っ張りっこ遊びです。
おもちゃを与えっぱなしで自由に遊ばせるのではなく、必ず人間が片方の端を持って、一緒に引っ張りっこで遊んでください。

飼い主さんが遊びの主導権を持っているということが大事なポイントです。

また、わんちゃんに引っ張りっこ遊びが楽しいと感じてもらうことがステップ1の目標になります。

ステップ2)

もしも、遊びの最中に犬の口(歯)が人間の手に当たったら、その瞬間に「あっ」と声を出して部屋から出て、わんちゃんから見えないところに行ってください。

大きすぎず、小さすぎない大きさの声で「あっ」と言ってください。

たとえ、わんちゃんに咬む意思が無くて、ただ口が当たっただけに見えても、同じリアクションをしてください。

この時、おもちゃは持っていってください。決して一人で遊ばせたままにしておかないことです。

この「あっ」という発声が、「遊びが終わる」という意味を持つ「コマンド」(=条件付け)になります。

わんちゃんに「自分の口が、飼い主さんの手に当たったら、楽しい遊びが中断される」と理解させるだけで十分なので、それ以上の罰は与えないでください。大声で叱ることもしないでください。

見えないことろへ飼い主さんが行ってしまう時間も、10~30秒ほどで構いません。戻って遊びを再開してあげてください。

そして、また口が当たれば、同じことを繰り返します。

ステップ3)

ステップ2を繰り返して、わんちゃんが遊びを中断される状況について理解できてきたら、次は引っ張り合いの遊びの最中にわんちゃんの身体に触れたりしてみます。

もしも、咬みついてくるようであれば、ステップ2と同様に「あっ」と言って部屋から出てください。

やはり10~30秒ほどで構いません。

ステップ4)

ひっぱりっこ遊びをしてない時でも、飼い主さんの体に咬みつくようなことがあれば、可能な限りこれまでのステップと同様か、それに近いリアクションをしてその場を離れてください。

例えば、台所仕事をしている飼い主さんの足にじゃれついて、咬みつき遊びを始めてしまうわんちゃんがいます。同じように対応してみてください。

甘咬みであれば、楽しいことをやっていると勘違いしているので、ダメなことはこのように教えてあげてください。

これを根気よく繰り返すと、たいていのわんちゃんの咬み癖は予防でき、軽いものなら修正できると思います。

※長期に咬み癖を放置する、間違った対応をしてしまっていたなどで、こじれてしまった子は難しい場合があります。

【大事なポイント】

子犬が咬むのは、そうした本能的行動を持つ犬の、遊びやコミュニケーションの一環ですので、本来はどのわんちゃんもやってしまう可能性がある行動です。そのことは理解してあげてください。

そのうえで「咬んでもいいおもちゃ」と「咬んではダメなもの(=人間)」があることを、理解してもらう必要があるということです。

犬は人間の言葉を完全には理解できませんので、状況から理解してもらうしかありません。

体罰を与えてしまうと、ただ怖がらせるだけで、「咬み癖を止めなきゃ叱られる」とはなりません。
言葉がわからないので、怒られた理由をきちんと理解してくれることはなく、悪くすると飼い主さんとの関係性がこじれてしまうだけです。
決して体罰は与えないでください。。

どんな状況でも、同じ「あっ」のコマンドで、同じようなリアクションをして対応することが大事です。

人の手を咬んでしまったら、「楽しい遊び/楽しい時間」が中断されてしまうといった状況を、人間が演技をしてでも作り出すのが、今回ご紹介した「カムアットレーニング」です。

皆さんの想像通りでしたか?「咬む/あっ/トレーニング」と、言葉をつなげた名前になっていました。
多くの訓練士さんが実践しているトレーニング法です。ぜひお試しください。

また、簡単なトレーニングでは対応できないような、重度の攻撃性のわんちゃんにお悩みの方の診察もお受けしています。
よろしければ来院前に、お電話でご相談ください。

みやペットクリニック 院長 宮本