慢性腎臓病について~part1~

猫ちゃんの飼い主さんには非常に心配されることが多い、慢性腎臓病のお話をします。

慢性腎臓病(以下CKDと書きます)にかかる猫さんは非常に多くて、中年齢以降CKDになっている猫さんは急増します。

腎臓の機能は主に尿を作ることです。その機能が徐々に低下して、ある程度以上の機能低下が進行してしまった状態をCKDと呼びます。(詳しくは、のちほど)

CKDは高齢猫の死因のトップです。つまり、猫が健康で長生きするための一番の課題です。

①CKDは元には戻せません

猫に限った話ではないのですが、腎臓は自己修復能力がほとんど無い臓器です。一度受けたダメージをリセットして、健康な腎臓に再生することはできません。

それなので、できる限り早くに病気の兆候に気付いてあげたいです。

②腎臓は少しぐらい具合が悪くても文句を言わずに頑張ります

CKDは、かなり進行してから、ようやく症状(=具合が悪いサイン)が出ます。
犬と猫のCKDの進行の段階は、世界的な統一指標があります。
当院えでは、この統一指標を重視して治療の相談を行っています。
この統一指標に則ったステージ分類をIRISステージと言います。

ステージの説明で「腎機能」という言葉を使っていますが、ここで言う腎機能とは「正常なおしっこ」を作る能力のことです。
腎機能が正常であれば、濃いおしっこを作り、老廃物を体からきちんと捨てられる能力があるということ。
腎機能が低下するということは、おしっこの量が減っていくことではなくて、上記のようにきちんとおしっこを作ることができなくなっていくことだと考えてください。

IRISステージ1
腎機能が33%になったときに、濃いおしっこを作ることができなくなってきて、多尿の症状が出はじめます。ですが、この段階は、本人はまだまだ元気です。十分な量の水が飲めない状況になると脱水しやすいリスクはあります。

IRISステージ2
腎機能が25%になったときに、血液検査で異常な検査数値が出始めます。ですが、多くの動物は具合が悪いようには見えません。

IRISステージ3
腎機能が10%を下回ってくると、徐々に痩せ始め、食欲低下や嘔吐などの具合が悪い様子が出始めることがあります。
動物によっては元気に見える子もいますが、本当は気持ちが悪かったり、倦怠感を感じていると思います。

IRISステージ4
腎機能が5%を下回ると、CKDの末期です。
かなり痩せてしまい、常に脱水状態となり、尿毒症症状が顕著に表面化します。かなり踏み込んだ治療を施していかなければ、QOLの維持が難しくなってきています。
脱水状態が進むと、腎臓への血流が低下して、尿を作り出すことができなくなります。これをCKDの急性悪化(=急性腎障害)と言います。たいへん危険な状態です。

③尿検査のススメ

「痩せてきた」とか「嘔吐を繰り返す」といった症状で具合が悪いと気づき、ようやくCKDだと診断したの、CKDは既にかなり進行してしまっています。
現実問題として、してあげられる治療も、治療の効果も限られてしまいます。(ステージ3~4)

もちろん、定期的な健康診断等の血液検査で異常値を検出することは、これからも大切ですが、それでも、病気はある程度は進んでしまっています。(ステージ2)

理想的な話をするならば、IRISステージ1の段階でCKDと気付くことができて、その進行を遅らせたいところです。
そのためには、尿検査が一番大事です。

病院が苦手な動物は多いですよね。人間も病院が嫌いなのに、わんちゃんや猫ちゃんが嫌いなのは当然だと思います。
でも、尿を採って持ってくるだけなら、何とか頑張れないでしょうか。

もちろん、のちほど、ご本人(わんちゃん、猫ちゃん)には、やはり頑張って来院してもらうこともあるかもしれません。
ですが、最初の検査は尿検査でいいと考えています。

一度、尿検査をしてみましょう。
ご希望の方は、尿を入れる容器をお渡しいたしますので、お気軽にお声がけください。

腎臓のお話は、パート2に続きます。