慢性腎臓病について~part2~

パート1に引き続き、慢性腎臓病(CKD)のお話をしています。

※「CKD=慢性腎臓病」のことです。

④猫はどうしてCKDが多いの?

猫ちゃんにCKDが多い悲しい現実は、割と広く知られています。
ですが、なぜ猫ちゃんにCKDが多いのか、あまりよくわかっていない部分も多いのです。
私の考えですが、ねこちゃんの腎臓が悪くなりやすい原因の一つは、現代の猫ちゃんの食生活にあるのではないかと思います。

猫ちゃんの進化の歴史という壮大な話からします。

猫という動物の進化の歴史を紐解くと・・・
イエネコ(私たちが「猫」と呼んでいるペットとしてのネコのことです)の祖先は乾燥地帯に暮らすヤマネコ(リビアヤマネコ)です。
ヤマネコを長い年月をかけて、家畜化した結果、どんどん人に慣れて、今のイエネコになっていきました。

※家畜化とは「野生動物を人に慣らし、飼育できるようにしていくこと」です。

今のところ、イエネコとリビアヤマネコは同種の動物として扱われます。(「亜種」として親戚関係のような位置づけです)
リビアヤマネコは乾燥地帯に適応して進化したため、あまり水を飲む習慣がありません。
捕らえた獲物を、そのまま捕食することで水分を補給しています。
リビアヤマネコが食べているものが、常にみずみずしい獲物であれば、水分摂取量は十分なのでしょう。野生のヤマネコの自然な獲物は、ネズミや小鳥でしょうね。

重要なポイントは、あまり水を飲まないご祖先様を持っている現代の猫ちゃんは今でも水をあまり飲まない動物だということです。

実際、私たちが飼っている猫ちゃんの食事を見ると、ややドライフードが多いと思います。
ドライフードは、保存がききますし、価格も安いことが多く、購入しやすいです。
そんなドライフードは、圧倒的に水分が足りていません。
私たちなら、お茶やお水が欲しくなるところですが、もともと水を飲まない猫ちゃんは、そんな状況でも積極的に水を飲んでくれません。
結果、常に尿が濃い状態になってしまいます。

このことだけでは、猫にCKDが多いことを説明できるわけではないですが、自然な食生活とは真逆な食生活による、水分摂取量の不足は腎臓の健康と無縁ではないと思っています。

水分摂取量が増えるように工夫してあげることで、CKDの発生率を少しでも下げられるかもしれません。

⑤CKDの原因は?

CKDの原因として、はっきりわかっているものには、以下があります。
 〔腫瘍、先天性疾患、中毒、尿路結石〕(その他にもいろいろ原因があります)

「腫瘍」「先天性疾患」は、早期に発見してあげたいものですが、罹ってしまうことは、私たち動物病院の取り組みや飼い主さんの努力で、どうしても避けられるものではないと思います。

「中毒」
腎臓に大きなダメージをもたらす、身近なものは、かなり数多くあります。
特に身近で有名なものは、猫だとユリ科全般、犬はブドウが危険とされます。

特に、猫のユリ中毒は、ユリの花粉も中毒になるため、猫の体についた花粉を、グルーミングで取り込んでしまう、という中毒も多いそうです。猫を飼われているご家庭では、猫の行動範囲にユリ科の植物が生えていないかご注意ください。ユリの切り花を生けるのは避けて欲しいところです。

身近に存在する物質の中で注意してほしいのは、エチレングリコールです。不凍液として使用されています。甘い味がして美味しいらしいので間違って舐めてしまう事故が多いようです。くれぐれもご注意ください。(もちろん、私は舐めたことはありません)

※この記事を書いている前後で、とても痛ましい幼児虐待のニュースを目にしました。
毎日のように全国ニュースになっているので、何らかの形でニュースを目にされた方も多いと思います。ニュースに登場している中毒物質が、まさしく「エチレングリコール」です。

「尿路結石」
結石を作りにくい生活環境を心がけることはできそうです。
例えば、水分を多く摂取した子は、常に濃すぎないおしっこを作ります。
おしっこが適度に薄くなっている子は、結石ができにくいと考えられます。
加えて、適度な運動と、適正体重を保つことも重要そうです。

腎臓のお話は、パート3に続きます。